やんちゃ君・女子など個に応じた叱り方

基本的な叱り方については効果的な叱り方と叱るときのポイントの記事でお伝えしましたが、叱るという行為には怒鳴りつけるようなものや叱責、注意、諭すなど様々なものがあります。これが1番良いというものはなく、時と場合によって使い分けることが大切だと個人的には思っています。

使い分けの1つとして、子どもの個性に応じて叱り方を変える方法があります。子どもによって叱り方を変えると言うと、「差別している」と感じる人もいるかもしれません。しかし、全員に同じ叱り方をすることで上手くいかないこともあります。現在、教育界では個に応じた指導が求められていますが、それは叱ることにおいても同じです。ここでは、対照的なやんちゃ君と女子に絞って考えてみます。

 

 

 

やんちゃ君の叱り方

やんちゃ君とは、男子の中でも存在感が強くボス的存在の子を指します。集団に合わせるのが苦手で自分勝手に見える行動が多く、発言力もあるので他の子と同じように接していては上手くいきません。特に女性教師は手を焼くことが多いです。女子の場合でも、やんちゃ君とタイプが似ている子の場合は同じ叱り方が効果的なケースもあります。

 

やんちゃ君の特徴

叱り方を考える前に、まずはやんちゃ君の特徴を考えていきます。そしてやんちゃ君の気持ちを理解した上で叱り方をマスターしましょう。

  • 頭で考えるよりも本能的な行動が多い
  • 叱られることに対する抵抗感が強い
  • 白黒ハッキリしないと納得がいかない

先ほども言いましたが、やんちゃ君は集団に合わせるのが苦手です。それは頭で考えるよりも本能で行動しているところがあるからだと言えます。集団の中での存在感が大きいのは「強さ」を持っているから。ボス的存在であることからも分かるように、やんちゃ君たちは集団内での権力が強いです。

やんちゃ君は他の子より叱られることに対する抵抗感が強いですが、それは叱られる頻度が多いのが原因です。本能的な強さは社会で必要とされる場面もありますが、学級集団では弊害になってしまう場面も多いためどうしても叱られる回数が増えます。叱られることで自分を否定されているように感じるというナイーブな一面を持っている子も多いです。また白黒ハッキリしていないと納得できない性格の子も多いように感じられます。本人もブレない物言いをする傾向があるので他の子たちからリーダーに押し上げられることも多いです。

 

 

その場で短く叱る

そんなやんちゃ君は、長々と叱られることを嫌います。また次の思考や行動に移るのが早いので、以前のことを掘り返しても覚えていないことが多いです。そのため叱り方としてはその場で短く叱るのが効果的です。長々叱ると何について叱られているか分からなくなってしまうので、重要なことだけを短いフレーズにして叱ります。

思うがまま自分勝手な行動をして集団を乱しているときは、迫力ある声でスパンと叱ります。怒鳴ることに抵抗があるという方は、律するという意識でやってみてください。怒鳴るというよりは驚かせる、本能的な行動をハッとさせてやめさせるというイメージです。迫力に欠けるとつけ上がることもあるので、黙らせるくらいの本気さと迫力は必要です。

 

 

全体を叱責する

やんちゃ君は個人的に叱っているときは言うことを聞くのに、全体の場になると言うことを聞かなくなる場合があります。もしそんな様子が見られるのであれば、それはプライドを守りたいからです。自分の力を誇示することでプライドを守っている子の場合、相手に勝てそうだと思うと言うことを聞かないことがあります。また言うことを聞いたとしても、途端に不機嫌になることが多々あります。

やんちゃ君は、自分の行動が周囲に悪影響を与えていることを理解していません。もし理解しているのにやめない場合は、自分で行動を制御する必要性を感じていないだけです。悪気がないため、叱られたことをなかなか受け入れられません。このような相手には、悪いことをしているときに叱るよりも望ましくない行動を未然に防ぐ方が効果的です。

全体がざわついているときや、教師の指示を守れていないときはチャンスだと思ってください。全体をバシッと叱責することで全員の背筋が伸び、ついでにやんちゃ君の態度も真面目モードに切り替わります。この方法であればやんちゃ君自身を叱責する必要がないので自尊心を傷つけることもありません。また、「この先生は怒らせると怖い」という印象を持たせることにもつながるため教師の前で悪さをしなくなります。

 

 

叱られ役をつくる

上記と似ている方法の1つですが、叱られ役をつくるというやり方もあります。上にも書いたように、やんちゃ君は自分の行いを省みることが苦手です。また、自分が叱られることにも強く抵抗します。そこで、叱られ役をつくりその子を叱っている姿を見せます。叱られ役の子の姿を見ることで、やんちゃ君はその場の状況を客観的に捉えられます。そして「自分も怒られないように気を付けよう。」と行動をコントロールするのです。つまり叱られ役の子をつくることで、やんちゃ君に触れることなく行動をセーブすることが出来ます。やんちゃ君を叱ると反抗してきて面倒なことになる場面も、反抗しない子を叱られ役にすることで教師は思い切って叱ることが出来ます。

しかし、この方法は叱られ役の子にかなりの負担が強いられるのが難点です。みんなの前で度々教師から叱られることになるので、周囲からその子が見下される可能性も出てきます。もしこの方法を実践するのであれば、叱られ役の子を叱る以上に褒め、可愛がり、クラスの人気者にしてあげるくらい大切にしなければなりません。また日頃から「あなたに期待しているから叱る。」「クラスの手本になってほしい。」というメッセージを送り、信頼関係を構築しておくことも必須です。

あまりに模範的な子は叱られ役には向いていません。なぜなら、叱ることがないからです。叱るほどでもないことで叱っていると、本人だけでなく他の子どもたちも不信感を持つようになります。やんちゃ君が学級に何人かいるのであれば、叱られ役を伸びしろのあるやんちゃ君から選出するのも1つの手ではあります。しかし、前述したように叱られ役の子には特別待遇が必要です。たとえ教師からみんなの前で叱責されるという仕打ちを受けていようが、学級のボスではない子が教師から可愛がられ人気者になってしまうと、それはそれでボスにとっては面白くありません。自分より下にいるということを分からせるためにその子をいじめる場合もあります。ある程度力を持っているやんちゃ君であればボスにとってライバルの1人であることは間違いないので、特に痛めつけようとする可能性が高いです。

叱られ役をつくるという方法はやんちゃ君を抑えるのにかなり効果的なのですが、このように一歩間違うとその子を傷つける危険があり、選出もその後のケアも非常に難しいです。適役がいなければ無理につくる必要はないので、他の方法から試してみてください。

 

 

叱る以上に褒める

やんちゃ君を叱ると激しいバトルが勃発するため叱ることはなるべく避けたいところですが、そうは言ってもやんちゃ君自身を叱らなければどうしても収拾がつかないときがあります。そういうときは有無を言わさず叱ってください。しかし、叱っているだけではいけません。やんちゃ君は「怒られる=自分を否定されている」という意識が人一倍強い部分があります。叱ったら必ずフォローすることを忘れないでください。

大切なのは、やんちゃ君の悪い部分だけでなく良い部分も見てあげることです。やんちゃ君は悪い行いをたくさんするかもしれませんが、よく観察するとそれと同じくらい良い行いもしているはずです。叱ったらそれ以上に褒めたり可愛がったりしてあげることで、たとえ叱っても教師から大切にされているということを感じてくれます。1回叱ったら3回褒めることを意識するだけで関係性は変わってきます。

 

 

 

思春期女子の叱り方

女子の場合、低学年~中学年くらいまではあまり手がかかりませんが、高学年へと近づくにつれてその扱いがだんだんと難しくなります。口調が大人に近づいてくるので言い負かされてしまうこともあるかもしれません。異性である男性教師にとって、気の強い女子は対応に困る場面が多くあるようです。また女性教師でも、同じ女だから分かってくれるはずと甘く見ていると離れていってしまうので注意が必要です。

 

女子には“事情”があることが多い

女子は自分の考えをしっかり持って行動している子が多く、自分勝手に見えるような行動にも本人なりの事情がある場合が多いです。そのため、やってはいけないのがやんちゃ君のように威圧的に叱ることです。このような指導をすると、問題が余計にややこしくなる場合があります。

例えばAさんがBさんの物を盗んだとします。教師は物を盗んだAさんを威圧的に指導しました。しかし、Aさんは以前Bさんから嫌がらせを受けていたためにこのようなことをしていたとします。しかし、威圧的な指導に怯えたAさんはそのことを教師に言い出せません。そして、結局Aさんが叱られただけで指導が終わります。すると、Aさんの中では「先生は私の話を聞いてくれなかった。」「Bさんだけを助けて私のことは助けてくれなかった。」という気持ちが残り、それ以降教師を信頼しなくなります。

 

 

言わないだけで不信感は残っている

同じケースでも、やんちゃ君の場合はたまらず「Bが先に嫌がらせしたから!」とはっきり物を言います。たとえ言えなかったとしても、相手の子に直接言うかいつの間にか忘れてしまう場合がほとんどです。しかし、女子の場合は違います。教師が自分の気持ちを受け入れてくれないのではないかという思いや、さらに物を盗んだ、つまり「自分も悪いことをしてしまった」という罪の意識が重なりなかなか本当のことを言い出せません。

そして、その場では謝罪したとしても心の中にはモヤモヤが残ります。物を盗んだことは責められるべきことだと分かってはいますが、自分だけが叱られBさんの罪が問われなかったことが忘れられません。そしてある日突然、そのモヤモヤが教師への反発という形で現れます。一度失ってしまった女子の信頼を取り戻すのは非常に難しいだけでなく、他の子も共感してその輪が広がると女子全員がついてこなくなる可能性もあります。教師はすでに解決した問題だと思っているので、何が原因で女子が反発しているか分かりません。急に女子が反抗し始めたように感じられます。

 

 

叱る前に、まず話をじっくり聞く

このように、子どもの事情を無視し教師が一方的に叱ってしまうことで不本意に叱られた形になると、心の中に不満が残り教師への不信感へと変わります。そして最悪の場合、教師への反発という形で問題が現れます。女子が急に自分への態度を変えた際には、たいてい上記のケースと同じように何らかの原因があるはずです。もしそうなってしまったら、しっかりと向き合って説明してもらい自分の落ち度をを謝罪するしかありません。

しかし、まずはそうなる前に未然に防ぐことが大切です。女子を叱る際には、じっくりと話を聞いてあげる。ただこれだけで解決できる問題です。威圧的に叱るのではなく、諭して納得させるというイメージで指導します。話が通じる子であれば、威圧しなくても自分の過ちを素直に認めます。そして話を聞く中で見えてきた事実に対しては然るべき対応をとる必要があります。落ち着いている、また気の小さい男子にもこのような指導が合っていることが多いです。

 

 

感情に寄り添う

女子を叱るときに大切なこととして、感情に寄り添うことも挙げられます。女子は感情の生き物とよく言われますが、話を聞いていると事実だけではなくストーリーのように出来事を話す傾向があります。それは出来事と感情が密接につながっている証拠です。そのため女子の場合はじっくり話を聞きながら気持ちに寄り添っていくことが信頼関係を築く上でも叱るときにも有効です。特に男性教師は気持ちに寄り添うことを苦手としている方が多いと思うので、意識しながら取り入れてみてください。

上記のケースで言えば、Bさんに嫌がらせされたときの苦痛をまずは受け止める必要があります。「嫌だったね、大変だったね。」とAさんの苦しみに共感します。その後でその子がしてしまった過ち、仕返しとして物を盗んだことについて言及していきます。最初の苦痛にしっかり共感し、だから盗んでしまったということを理解してあげれば、Aさんは物を盗んだことも反省するはずです。望ましくない行動に関しては、その後で釘をさせば問題ありません。上記の例で言えば、困った時に仕返しをするという解決方法が良くなかった、人の物を盗むのは何があってもしてはいけないということの2点を指導する必要があります。Aさんが望んだ際は、Bさんへの指導も忘れずに行ってください。

 

 

 

状況に合わせて対応

今回の記事ではやんちゃ君と女子を叱る際のポイントを紹介しましたが、これはあくまで基本であり、子どもの個性やその場の状況などによって指導は変わりますやんちゃ君でもじっくり話を聞いてあげなければならないことがあれば、女子でもスパンと叱った方がいいケースもあるということです。そのため、どのように叱るかは、最終的にはその場で教師自身が選択していくしかありません。そしてその判断力は、子どもと関わる中で養っていくしかないのです。まずは様々な叱り方を身につけ、あらゆる場面に対応する術を持ってください。そして色々と試しながら子どもをよく観察し、上手くいくやり方を見つけていきましょう。