モンペ・クレームに悩まない!保護者対応マニュアル

鳴り止まない電話、疲弊する職員。近年、小学校の教員にとって保護者対応は緊急の問題です。最近はモンスターペアレントと呼ばれる理不尽で自己中心的な保護者が増え、若手教師だけでなくベテラン教師をも悩ませています。子どもの問題ではなく保護者トラブルに悩んで鬱になったり、教師を辞めたいと思ったりした先生も少なくはないでしょう。保護者対応の術を身につけておかなければ教師をやっていけない時代が来ています。

 

 

保護者との信頼関係はなぜ必要?

経験の浅い若手教師にとって、保護者からの信頼を得ることは緊急課題です。「学級は子どもが主役だ!」と思う先生は多いと思いますが、保護者にも気を付けておかないと必ず痛い目に合います。問題の予防としてだけではなく、子どもの健全な成長のためにも保護者との信頼関係を築いておくことは非常に重要です。子どもは学校だけで育てることは出来ません。家庭との連携が必須であり、教師と保護者が協力し合いながら子どもを見守る環境を整えておくことが理想的です。

 

信頼の有無で結末が変わる

仕事では、どんなに頑張っていても必ず失敗をします。人間なので当たり前のことです。しかし、このとき保護者との信頼関係が築けているかどうかで失敗の結果が変わるのです。保護者からの信頼がある場合、たとえ失敗しても「あの先生だから大丈夫。」「いつも頑張っているから許せる。」と協力的な姿勢になってもらえます。ですが、信頼がないとクレームにつながる可能性があります。

このことは、失敗に限らず保護者の考えと教師の方針との違いで起こる行き違いの問題にも当てはまります。信頼関係が築けていれば、保護者が疑問に思うことがあっても「何か先生のお考えがあるんだろう。」「あの先生だから間違いない。」と前向きに受け取ってもらえますが、信頼がなければ不信感へとつながってしまうのです。

このように、同じことをしていても信頼の有無によって事の結末は大きく変わります。特に若手は経験の不足からミスも増えやすいだけでなく、保護者も意見を言いやすい雰囲気があるので信頼があるかどうかで明暗が分かれます。

 

 

 

保護者と上手に付き合うコツ

保護者と協力し、学級を維持していく上でまず大切なのが関わり方を見極めることです。新学期には家庭訪問や学級懇談会など保護者と接する機会が多くあります。そういった場で保護者としっかり対話し、教育に対する意識などを探りながら相手とどのように関わるべきか考えていく必要があります。

関わりを考えるということは、ある意味人によって対応を変えるということです。こう言うと公平でないような印象を持たれるかもしれませんが、差別をするのとは少し違います。学級内にも押さえておくべき子どもがいるように、保護者においてもポイントとなる方を把握した上で関係性を築いていくことが大切なのです。そもそも、保護者によって教師に求める対応は異なります。教師と深い関係を築き学級の維持に協力したいという方もいれば適度な距離間で関わりたいという方もいるので、相手によって対応を変えていくことはお互いのためなのです。そのあたりを心得ている先生は、学級を見ればどの保護者に気を付けなければならないか分かるため保護者との関係性が良好です。

 

「この人は」という保護者を味方につける

連携が大事とは言っても、保護者全員と綿密なコミュニケーションを図るのは困難です。それをやろうとするとまず時間が足りませんし、忙しい方や距離とりたい方にとっては迷惑です。重要なのは、学級を維持する上でキーパーソンとなる方に味方でいてもらうことです。キーパーソンとなる保護者というのは、ズバリ学級の保護者の中でもリーダー的存在で他の保護者に対する発言力や影響力を持っている人物です。

影響力を持つ保護者を味方につけることが出来れば、学級内の多くの保護者を味方に出来ます。そうなれば、保護者全体の教師に対する信頼が高まるので様々な場面で協力を得やすいです。このような保護者に対しては、教師からも積極的にコミュニケーションを図り信頼関係をしっかりと構築することが大切です。対立してしまった場合は保護者の多くを敵にしてしまうことになるので、こういった方への対応はより慎重に、丁寧に行ってください。

 

 

心配性な保護者にはこまめに連絡

基本的には、緊急の用事や大きな問題がない限り学校から保護者に連絡を入れることはありません。ちょっとしたことで連絡されるとほとんどの保護者にとっては迷惑だからです。しかし、中にはまれに些細なことが気になってしょうがない方がいます。

小さなことが気になって仕方ない保護者に対しては、問題やトラブルがあったときにはそれがどんなにちょっとしたことでも先に連絡を入れるようにしておくのが望ましいです。なぜなら、こちらが連絡しなければ保護者から連絡がくるからです。学校からこまめに連絡が来ていると、保護者は「先生はよく見て気が付いてくださる。」と安心されますが、保護者からの連絡が続いて対応が後手後手になると不信感を持たれてしまい、最悪の場合クレームにつながります。

 

子どもの様子に問題がなくても連絡する

ちょっとした問題が起きた時、子どもの様子に変わりがなければ連絡しなくてもいいというわけではありません。小さなことが気になる保護者は、子どもを守ろうとする気持ちから学校の様子を細かく聞き出し子ども以上に不安になります。また、子どもは言葉足らずだったり自分に都合の良い情報だけを伝えたりすることがあるため、事実と異なる内容が伝わってしまう可能性があります。子どもの口から伝わるより先にこちらから事実を伝えて保護者を安心させることが大切です。

 

 

 

保護者からのクレームにどう対応する?

日頃から保護者に慎重な対応をしていたとしても、様々な行き違いやトラブルからクレームにつながってしまうことがあります。最近は理不尽で自己中心的なモンスターペアレントが増えていますが、クレームの連絡をしてくる保護者がみなモンスターペアレントとは限りません。中には本当のモンスターも潜んでいますが、教師や学校側の対応が適切でなかったためにモンスターにならざるを得なかったケースもあるのです。それだけは避けたいところですね…。

 

クレームは信頼を得るチャンス

クレームがくると憂鬱になるかもしれませんが、まずは保護者とじっくり向き合う機会だと前向きに捉えてみましょう。学校へ苦情を言うのは、裏を返せば教育に対する関心が高いということ。相手がまともな方ですれ違いが起きているだけなら、適切に対応することで信頼を勝ち取れる可能性もあります。クレームは強力な味方を得られるチャンスでもあるのです。では、保護者が納得する理想的な対応とはどのようなものなのでしょうか。

 

 

最初の一手で全てが決まる

保護者対応は、初期対応が全てといっても過言ではありません。保護者から最初に連絡を受けたとき上手く対応できれば問題の深刻化を防げます。保護者からクレームの連絡がきたら、その時点で問題が生じていることを受け入れ本気で取り組む覚悟を決めることが解決のカギです。反対に、ここで曖昧な対応をして解決を長引かせると問題がどんどんこじれていき解決が難しくなります。

 

 

まずは親身に話を聞く

基本的に、保護者は自分の子どもを預けている手前「学校への苦情の連絡は控えたい。」と思っています。そのためよほどのことがない限り苦情の連絡はしてきません。その気持ちを断ち切って連絡してきているということは、その時点で問題が深刻であることを意味しています。保護者がどんなに落ち着いた声色(文面)で伝えていたとしても、不安な気持ちや憤りを抱えていることを理解しておいてください。

保護者から苦情の連絡が入ったときは、まず親身に話を聞いてください。そのときのポイントは、

  • しっかりと相槌を打ちながら
  • 相手の考えに共感し
  • 話が終わるまで口をはさまない

このようにして聞くことです。「はい、はい。なるほど、~~~~なんですね。」と、相槌を打ちながら時折言葉をくり返して話の内容をよく確認してください。共感しながら話を聞くことで教師が問題と真剣に向き合おうとしていることが保護者に伝わります。

間違っても、不安を抱えながら連絡をしてきている相手に対して他人事のように対応してはいけません。また、途中で「こちらとしてはーーー」「ですがーーーーーですよね?」のように意見することも禁物です。最初にこのように対応してしまうと、「先生は問題の深刻さを分かってくれていない。」「本気で解決しようとしていない。」と思われてしまいます。1度このような印象を与えてしまうと、その後どんなに真剣に対応しても気持ちが伝わりにくくなってしまいます。

 

 

 

相手の予想より一歩先行く対応をする

クレームの連絡が入っている時点で教師(学校)の評価はマイナスです。普通の対応をしているだけでは、良くても最初の評価に戻すのがやっとでしょう。この評価をプラスへ変え、信頼を勝ち取るには保護者が想定するより1ランク上の対応をすることが重要です。

 

すぐさま家庭訪問

相手に最も誠実さが伝わるのは、迅速で丁寧な対応です。保護者から苦情や相談の連絡を受けたときに取るべき迅速で丁寧な対応はたった1つ、すぐに家庭訪問をすること。面倒だと思うかもしれませんが、最初に家庭訪問をして顔を見ながら話し合っておくことで誠実さが伝わります。このとき電話や連絡帳で済ませてしまう方が後からもっと面倒なことになります。ほとんどの保護者は、「わざわざ家に来て話を聞いてくださって…」と心の中で感謝されることでしょう。信じがたいかもしれませんが、連絡を受けてすぐに家庭訪問をしておくことは、後々想像以上の効果を発揮してきます。

 

連絡帳で済ませない

どうしても家庭訪問が難しいという場合も、連絡帳で済ませることだけは避けてください。連絡帳は相手の様子が分からないため一方的なコミュニケーションになってしまいます。少なくとも電話であれば、相手の言葉や声色から雰囲気を察して言葉を選ぶことが出来ますが連絡帳ではそれが出来ません。文字のみのやり取りは相手に誤解を与える危険性が高いうえ、迅速さが求められるクレームやトラブル対応には不向きです。また、連絡帳に書くとはっきり証拠が残るため万が一の場合に不利という点もあります。時間が取られて煩わしいと思うかもしれませんが、クレーム対応は少なくとも電話、可能なら家庭訪問が望ましいです。

 

 

対応策を考え保護者と話し合う

自分で対応策を考え実践できるという先生は問題ありませんが、すぐに万全の対応策を準備するのはベテランでない限り難しいと思います。また、自分の考えを過信しすぎるのもあまり良くありません。クレーム対応は慎重に行う必要があるため、同学年や近接学年にベテラン教師がいるという方はその先生、併せて管理職に相談の上で対応した方がいいです。

対応策が決まれば、いよいよ保護者との話し合いです。状況にもよりますが、学校にクレームを出している保護者は困っている状況で、不安や心配があるためにわざわざ連絡してきています。然るべき対応を取ることはもちろん大切ですが、それだけでは足りません。保護者の不安や心配を取り除くことが出来なければ問題は解決しないということを忘れないでください。

問題を解決するためにも、保護者に対応策を伝えるときは相談するというスタンスでいることが重要です。保護者と向き合ったら、まずは対応策を丁寧に説明します。その際は、「このようにしていこうと思いますがよろしいでしょうか?」と、確認を取りながら伝えるようにします。保護者側の気持ちを尊重しながら伝えるという意識が大切です。話し合いを終えたら、もう一度解決に向けての方針を確認します。繰り返し確認することでどう指導するかについて共通認識を深め、認識や理解のズレを無くしておくと安心です。

 

時間がかかりそうなときはひとまず家庭訪問

若手教師は、管理職や同学年の先生に同行してもらうと安心です。その場合、他の先生方の都合もあるので説明の家庭訪問が遅れてしまうかもしれません。そういうときは、話を聞くだけになっていいのでとりあえず家庭訪問をしておいた方がいいです。「もしご都合がよろしければですが、お顔を見ながらしっかりお話を聞かせていただきたいです。」と保護者に一言断った上で訪問し、「今日のお話をよく心に刻み、早急に対応を考えます。」と伝えるだけで十分に誠意を伝えることが出来ます。その後は、上記の手順で話し合いを行ってください。

 

 

保護者に指導の報告をする

ここまでは実践しているという方もいるかもしれませんが、多くの先生が怠りがちなのが指導後の報告です。完璧に解決するということはあまり無いので、保護者と接触するのは憂鬱かもしれません。ですが、逆の立場から考えたら報告が無いと不安なはずです。また、教師が報告しなければ保護者は子どもの口からしか指導の様子を聞くことが出来ません。それに任せていては、教師が実際にどのような指導を行ったのかがきちんと伝わらないのです。もし誤って伝わってしまえば問題はさらに深刻化します。このようなすれ違いを防ぐためにも、指導を終えたら必ずその内容や子どもの様子などを保護者に報告してください。少なくとも電話、可能なら家庭訪問をしておくと確実です。

私も以前学校に夫婦で乗り込まれるくらいのクレームを受けたことがありますが、出来る限りの対応を全て行ったあと報告のために家庭訪問をしました。当時は力量不足なところもあり解決には至っていなかったため叱られると思っていましたが、「ありがとうございました。頑張ってください。」と感謝の言葉とプレゼントをいただいたことがあります。叱られることを覚悟で向かったのに逆に応援されたので本当に驚きました。おそらく、真剣に解決しようとする誠意が伝わったおかげだと思います。相手が良かったということもあると思いますが、懸命に取り組んだことを伝えるためにも指導後の報告をすることは大切です。

 

 

 

保護者から信頼される努力をする

保護者との関係が悪くなりクレームに悩まされると、日頃の業務に支障が出てしまい最悪の場合は学級を維持できなくなってしまうこともあります。教師として順調に仕事をこなしていくには、授業や学級経営に力を注ぐだけでなく保護者の良好な関係を築いておくことも大切です。そのために、自分で判断するだけでなく受け持ちの保護者と関わりがある他の先生から情報をもらうことも有効です。

 

保護者との信頼関係はプラス効果

最近はコミュニケーションツールの発達により保護者同士がつながる機会も増えています。保護者の情報網はあなどれません。学校や教師の噂は良いことも悪いこともあっという間に広まってしまうのです。多くの保護者と信頼関係が築ければ「あの先生はいいらしいよ。」と噂が広まり、新学期から歓迎ムードで話も通りやすくなる一方で、反対の場合はマイナスからのスタートとなってしまいます。保護者は味方につけておくに越したことはありません。

 

 

モンスターペアレントとどう関わるか

もちろん、学校に対する理解がある保護者ばかりではありません。学校に対して不信感を持っていて「何か文句を言いたい」と思っている人もいます。またこれまでのやり取りの中で我慢を重ねるうちに少しずつ不満が溜まり、些細なことをきっかけに不満が爆発するケースもあります。

ベテラン教師は、若手に比べると保護者にとって年齢や経験の問題から苦情を言いにくかったり、上手く説得する力があったりして保護者がしぶしぶ諦めてくれることもあります。そのため大きなクレームになりにくい部分がありますが、若手は経験が少なく素直なためつつきやすいのが現実です。そのため自分自身に大きな問題がなくとも、ちょっとしたことをきっかけに大問題へとつながることもあるのです。

本当のモンスターペアレントやクレーマーに対しては、“我慢”です。残念ですがこれしかありません。悪い方ではなくても、考え方が根本的に違うために合わないこともあります。「合わないときは教師も保護者も我慢するしかない。」これは、私が尊敬する教師がよく言っていた言葉です。やるべきことをやった後は、お互いに1年間の我慢と思って耐え忍ぶ。モンスターペアレントに出会ってしまったら、それはもう仕方のないことです。事故にあったと思いましょう。自分を責めてはいけません。