学年初めにある家庭訪問の心得

新学期の家庭訪問。初めて子どもたちの保護者と対面するこのイベントは、なかなか緊張します。いざ家庭訪問に行くとなっても、保護者に話す内容や聞くことが分からず戸惑ってしまうかもしれません。

新しい学級をしっかりまとめていくためには、「家庭訪問に行かなければならないから行く」というのではなく「目的意識を持って行く」という気持ちが大切です。しっかりとした目的を持って家庭訪問に臨んでもらうためにも、家庭訪問の目的や注意点、訪問時のマナーなどを心得としてまとめました。

 

 

 

家庭訪問の目的

 

家庭訪問をする意義や主な目的は以下の2点です。

① 家庭環境を把握する。

② 保護者と教師の人間関係を構築する。

 

家庭環境の把握

まず何よりも大切なのが家庭環境を把握するということ。家の中は子どもたちが長い時間を過ごす大切な環境の1つです。家庭環境の把握は1人1人の子どもを理解するうえで重要なポイントとなります。

子どもたちがどのような環境の中でどういった生活を送っているか少しでもつかむために、何気なく家の中を眺めるのではなく子どもの生活を想像しながら観察するという意識を持って臨んでください。学校では知ることが出来ない子どもの背景が見えてきます。

 

保護者との人間関係構築

これから1年間子どもを預かる上で、家庭訪問は保護者に「初めまして」の挨拶をする場です。授業参観や懇談会など「家庭訪問じゃなくっても新学期に保護者と会う機会は他にもあるのでは?」という意見もあるかもしれませんが、教師自身が保護者のもとへ出向くというプロセスが大事なのではないかと私は思っています。初めて担任と顔を合わせるとき保護者に学校へ足を運んでもらうのではなく、まず教師自身が保護者のもとへ出向いて挨拶をする。そうしておくことで、保護者とよりスムーズに人間関係を構築することが出来ます。保護者も「今年はどんな先生だろう?」と期待して待っています。より良い印象を残せるように頑張りましょう!

 

 

 

家庭訪問で聞くこと

 

まずは「保護者の考え」をじっくり聞く

気を付けてほしいのですが、家庭訪問は学校の要望を伝えたり子どもの改善を促したりする場ではありません。子どもの家庭環境を知り、保護者との新たな関係を築く場という認識をしっかりと持ってください。

まずは保護者の話を聞き、子どもの性格や教育に対する保護者の考えをしっかりと聞きましょう。それをする前に教師の意見を押し付けてしまうと、その後の関係構築が難しくなってしまいます。保護者の中には、学校や教師に対する苦手意識が強く「話しづらい。」という気持ちを抱いている方が結構いらっしゃいます。家庭訪問までに子どもの気になるところが見えていて保護者に伝えたいかもしれませんが、緊急を要する場合でなければ「ぐっ」とこらえて保護者の話に耳を傾けましょう。

 

 

保護者が何も言わないときは?

全ての保護者が子どものことや家のこと、教育に対する考えを自ら話してくれるわけではありません。反対に「先生、うちの子ども学校ではどうですか?」と質問してきたり、学校に関する話を切り出してきたりする場合もあります。その際は、話を合わせつつこちらからも質問するなどして本題につなげていくことが大切です。

 

 

保護者への質問例

具体的にはどのような質問をしていけばいいのでしょうか。私が家庭訪問の際に聞いていたことを例として挙げてみます。

◆ ○○さんは、いつも家ではどんなことをして過ごしていますか?

→ 宿題をしている、友達と遊んでいる、習い事をしている、ゲームをしているなど普段の様子を具体的にお話ししてくださいます。児童生徒理解につなげてください。

◆ これから○○さんをお預かりする上で、学校に対する要望やお願いなどはありますか?

→ ここでは病気やアレルギー対応などが主な話になってきます。子どもに足りない部分(育ててほしい部分)や、友達付き合いに関する話が挙がることもありました。

 

家でどのように過ごしているかという質問を切り口にして話を広げ、保護者の教育方針や考えを聞き出すことを意識してください。よりその子の背景を理解することが出来ます。

要望やお願いに関しては、「そんな質問をすると無理難題を言われるのでは。」と反対する先生もいらっしゃるかもしれません。ですが、学校に対して不満を持ちながらも自分から言い出せず抱え込んでいる保護者の方は意外といらっしゃいます。この問題を放置しておくと、結局クレームへとつながってしまうということもあるので、不満が爆発する前に思い切って聞いておいた方がいいと個人的には思います。

ただし、要望は聞けることとそうでないことがあるのは事実です。確実に答えられること以外その場での明言は避け、「私1人で決められることではありませんので同学年(同僚)や管理職とも相談した上で後日回答させていただきます。」など上手く回答を濁して慎重に対応するのが無難です。また、何でも受け入れるのではなく説明できることであれば学校側の考えを伝えることも大切です。学校と家庭で認識が異なっていたということはよくあります。なぜそのようなやり方や対応になっているのかをきちんとお話しすることで学校の考えを理解してもらえれば、関係がより良い方向に進展します。

 

 

 

家庭訪問で話す内容

家庭訪問では保護者の話をよく聞いてほしいのですが、さすがに教師からの話題が1つもないと会話が止まってしまうこともあります。そんなとき、ぜひ保護者に伝えてほしいことがあります。それは、お子さんの活躍や長所です。

 

 

家庭訪問では子どもを褒める

保護者は、子どもに対する担任の評価を少なからず気にしています。また、それと同時に担任がどのような人物であるかも気になっています。子どものことを褒めれば、保護者は安心しますし担任への信頼度も増します。

「良い所だけを話していたら、子どもが完璧な良い子だと保護者が勘違いしてしまうのではないか・・・」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。保護者も子どもの短所は分かっていますし、より成長してほしいと思っています。

1年間の間に、子どもは様々な問題を起こします。未熟なので当たり前です。そのため、保護者に子どもの欠点を突き付けねばならないタイミングはおのずとやってきます。そのとき教師からの指摘を聞いてもらう姿勢をつくっておくこと、それが家庭訪問の段階でやっておくべきことなのです。

 

 

子どもの欠点は基本的に言わない

保護者から気になる部分についての話が出たり、相談という形で持ちかけたりする分には問題ないかもしれませんが、教師側から子どもの短所について家庭訪問の場で言及するのは可能な限り避けた方がいいと私は思います。家庭訪問で子どもの欠点を伝えるという行為は、保護者にとって「初対面の相手から子どもをけなされる」ことと同じです。どんな保護者も、長い間自分なりに一生懸命子どもを育ててきています。短所があるということは分かっていたとしても、「ちょっとだけしか見ていないあなたに何が分かるの?」というのが本音でしょう。初めて会った場で否定的な印象を持たれてしまうと、信頼関係の構築が難しくなり結果的に子どもを伸ばすことが出来なくなってしまうこともあります。

家庭訪問では、やはり子どもの長所を伝えるのがおすすめです。家庭訪問以外にも、なるべく多くのチャンスを見つけて保護者に子どもの頑張りや良さを伝えることが大切です。それを繰り返すことで、「先生はうちの子のことを想ってくれている。」「子どものことを理解しようとしてくれている。」という印象を持ってもらえます。そしてそれは、教師への信頼感につながるのです。信頼関係が出来ていれば、いざ問題が生じたときにも「この先生が言うなら間違いないだろう。」「子どもを伸ばすために言ってくれているのだろう。」と考えてもらえるので協力を得られやすいです。

 

 

 

家庭訪問時のマナー

 

時間は絶対に守る

保護者は、家庭訪問のために仕事やプライベートの都合をつけて準備しています。それなのにこちらが時間に遅れていくのは失礼です。もちろん、何軒も家を訪問している教師の方が待っているだけの保護者より何倍も大変です。しかし、それが仕事ですしそんなこと保護者には関係ありません。待たせている時間の分だけ信用を失っていると思ってください。教師自身が時間を守れていなければ、子どもに指導するときにも筋が通りません。

とはいえ、あまり早い時間に伺うのも良くないです。保護者も時間に合わせて準備をしているので、訪問が早すぎると困らせてしまう場合もあります。気持ちを整えたり話す内容を整理したりするくらいの余裕をみて、予定時間より2~3分前くらいに着いておくといいです。

 

 

家庭訪問する際の服装

家庭訪問も業務の一部なので、最も無難な服装はスーツでしょう。私も新任の頃はスーツで家庭訪問をしていました。ですが、実際のところ全身スーツでバッチリきめる必要はありません。私が勤めていた学校のベテラン教師の中には、かなりカジュアルな服装で家庭訪問を行く先生もいて「そんな格好でいいの?!」と驚いたぐらいです。学校によっても違いがあるので不安であれば先輩同僚に聞いてみるのが1番ですね。

とりあえずスーツを着ておけば、マナー的に問題が無いというのは大きなメリットです。しかし、スーツにはデメリットもあります。まず若い教師がスーツで行くと、経験が浅いことを見抜かれて立場が悪くなる可能性があります。若さを武器にしているなら問題ありませんが、あまり前面に出したくないという先生はやめた方がいいかもしれません。

それから、スーツに対して威圧感やよそよそしさを感じるという保護者もいます。そもそも「学校」や「教師」に対してよそよそしく感じている人が多いので、そういう家庭にスーツで行くとより距離が出来てしまうかもしれません。家庭訪問は、かたい雰囲気よりも和やかな空気で進めた方が保護者も教師も話がしやすいです。それを考えると、カッチリとしたスーツよりも、ビジネスカジュアルな服装できちんと感を出すくらいが丁度良いと思います。

 

服装についてはこちらを参考にしてください。

【校種別】女性教師の理想的な服装と注意点 ~春夏秋冬コーディネート~

【校種別】男性教師の理想的な服装と注意点 ~春夏秋冬コーディネート~

 

 

お茶やお菓子はいただいても良い?

お茶やお菓子については賛否両論あり、これといった決まりはありません。私のまわりにはお茶だけ飲んでお菓子はいただかないという先生が多かったように感じます。

私も、家庭訪問先では基本的にお茶だけ飲むようにしていました。というのも、保護者と話をしているとなかなかお菓子を食べるタイミングが無いからです。また教師としての印象を考えると、家庭訪問先でお菓子に手をつけるというのは少し微妙な気がします。何度もお会いしている保護者であれば既に信頼関係が築けているので問題ないかもしれませんが、初対面の保護者の前では控えた方が無難です。

ですが何も手をつけないのは準備していただいた手前申し訳ないので、お茶だけ飲むというのがベストなのかなと個人的には思います。お茶であれば話しながら飲むことも出来ます。ただし、飲み過ぎるとトイレに行きたくなるので数口がいいかもしれません。受け持つ子どもの人数が多いという場合は、時間に余裕が無いので特に気をつけて下さい。

保護者の方から「せっかくなので食べてください。」「お菓子もどうぞ。」などと促されたときは手をつけることもありました。保護者の中には食べなかったお菓子を持たせてくださる方もいらっしゃいますし、それは受け取っても良いと思います。断りすぎても好意を無下にされたと気を悪くされる場合があるので、迷ったときは保護者の様子を見ながら判断してください。

 

1番良くないのは家庭によって差が出ることです。「あの家では食べたのにうちでは断られた・・・」このようなことになると、自分の家庭が良く思われていないのではないかと心配してしまう保護者もいます。そういったときにも説明できるように、「基本的には手を付けず、促されたらいただく」など自分の中でルールを決めておくといいです。行動に一貫性があれば、たとえ噂が広がってもどこかで決着がつきます。

ただし、夕食をごちそうになるとかアルコール類をいただくというのは“接待”に近いので絶対にお断りすることをおすすめします。これらは賄賂のような形になり印象が悪いですし、あらぬ疑いを持たれかねません。結びつきの強い特殊な地域などでは例外もありますが、ほとんどの家庭がしていないという場合は断りましょう。

 

 

メモを取るタイミング

家庭訪問には必ずメモを持参して欲しいのですが、書くタイミングには注意が必要です。保護者と話している最中にメモを書くのはあまり良くありません。家庭訪問は「対話」のような雰囲気で行うのが理想的です。ノートではなく保護者としっかり向き合いながら話を進めてください。

私は保護者との話が終わり、お宅を出た後や車に戻ってからササッと書くようにしていました。重要な内容でどうしてもメモが必要な場合は、一言断ってから書くようにすればマナー的にはOKです。

 

 

 

成功の秘訣は保護者の立場で考えること

家庭訪問の心得として色々なことを紹介してきましたが、お茶菓子のマナーに関しても「全ていただく」という先生もいれば「一切いただかない」という先生もいらっしゃいます。何が正解かというのは結局のところ分かりませんし、特に大きな成功が無くとも問題なく終えられればそれが1番なのかもしれません。

ただ1つだけ言えるのは、成功させたいのであれば何事も保護者の立場から考えるべきということです。家庭訪問となると教師は緊張すると思いますが、先生に家を見られる保護者はそれ以上に緊張します。しかも、保護者は仕事で忙しい時間を埋め合わせて、ほんの15分程度の時間のためにお茶菓子を用意し、掃除し、身なりを整えて準備をしています。

そのことに対して感謝の気持ちを持ちながら、子どもをより良い環境で育てていくために必要なことを聞き、必要であれば質問にお答えしていくという意識を教師が持っておくことで、保護者からの信頼もアップし安心して任せようという気持ちになってくれるのではないかと思います。

家庭訪問は、教師と保護者のファーストコンタクトです。第一印象が重要ということはよく言われますが、ここで信頼を失ってしまうとその後の学級経営にも支障が出てくる可能性があります。反対に、好印象を与えられれば協力的な姿勢を持ってもらえます。出来る限りの準備をして臨みましょう!