学級内の秩序を保つための方法

秩序を保つための指導

秩序という言葉は一般社会においても使われる言葉ですが、「秩序がある」というのは集団が望ましい状態を保っていることを言います。

秩序のある学級

  • 子どもが教師の指示に素直に従う
  • 学習することや友達と協力することは当たり前という雰囲気がある

学級の場合、このような状態であれば秩序が保てていると言えます。

学級の秩序を保つには厳しく指導するのが良いのかそれとも優しく温かい指導をするのが良いのか、意見が分かれるところだと思います。ですが、どちらか一方だけで集団を維持していくことは出来ません。秩序のある学級をつくっていくためには「厳しさ」と「優しさ」の両方が必要です。子どもたちをただ抑えつけるだけ、ただ優しく甘やかすだけの指導ではこのような学級を実現することは出来ません。「厳しさ」と「優しさ」の両方を教師が持っている。つまり「規律」と「自由」のバランスが取れ、「引き締まった空気」がある。これが秩序のある学級です。学級の秩序を形成し維持していくために、プロ教師たちは意図的な指導や演出を行っています。

 

学級に秩序を生み出す方法

プロ教師も使っている学級に秩序を生み出すための技。それは、子どもたちに対して最初のうちは厳しく接し、だんだん優しく接していくというものです。非常にシンプルで分かりやすい方法ですがこれはとても理にかなっており、学級内の秩序を保つには非常に効果的な方法です。この流れを意識して指導することで、教育活動を円滑に進めていくことが出来ます。

 

 

最初に厳しく指導する方法が効果的な理由

子どもに悪い印象を与えることなく「規律」を教えられる

最初に厳しく接することは、最初に優しく接するよりも多くのメリットがあります。子どもたちが受ける「印象」もそのうちの1つです。一見、最初に優しく指導した方が良い印象を与えることが出来るように思われるかもしれませんが、そうではありません。このことは、あなたが人付き合いをしている中でのことを想像してみるとよく分かります。

最初に厳しくした方が後から厳しくするよりも印象が良い

AとB、2つの例を提示してみます。それぞれからどのような印象を受けるでしょうか。

A 厳しくて冷たいと思っていた人からだんだん優しいことを言われるようになった。

B 優しくて温かいと思っていた人からだんだん厳しいことを言われるようになった。

Aの場合、最初は「この人苦手だな・・・」と感じるかもしれませんが、本当は優しい人だということが徐々に分かっていきます。第一印象からのギャップで“優しさ”が強調されるため、多くの人は「良い」印象を受けるはずです。しかしBの場合、優しい人だと期待していたにも関わらずコミュニケーションを取るうちに本当は厳しい人だということが判明していきます。この場合、優しさからのギャップで“厳しさ”が協調されるため「悪い」印象を受ける人の方が多いでしょう。AとBの例は、どちらも「厳しさ」と「優しさ」の両方を含んでいるのに、見せる順番が違うだけで人が受ける印象は大きく変わります。そしてそれは子どもも同じです。

はじめに厳しい印象を持たせることで、子どもは「こわい先生だな」と感じるかもしれません。しかし、最初に厳しいと思っていた先生がだんだん笑顔を見せるようになると、子どもは安心感を覚えます。また、厳しくしていると「きちんとしている」という印象も与えることも出来ます。きちんとした先生が優しくしてくれたという事実は子どもにとってプラス面の方が大きいです。

 

最初に優しく指導すると厳しい指導がしづらい

反対に、最初に優しいと思っていた先生がだんだん厳しくなると、子どもは混乱します。「優しかったのにどうして冷たくなったのだろうか」と不思議に思うのです。最初に上がった好感度は下がっていくだけで、厳しい指導を重ねるほどに最初は好きだった先生がだんだん嫌いになっていく可能性もあります。

優しい印象の先生が厳しいことを言っても、その指導を子どもが「自分たちのために言ってくれているのだ」と受け取ってくれるなら問題はありません。最初から最後まで「いつもは優しいけど厳しいときもある先生」というバランスの取れた教師でいられます。しかし他の記事にも書いているように、学級内にいるのは素直に言うことを聞く子ばかりではありません。教師に従順な子だけしかいないクラスなら最初に優しい印象を与えることに何の問題もありませんが、教師に反抗する力を持っている子がいる場合はリスクの方が大きいです。

例えば、子どもは時に信じられないわがままを言ったり自分勝手な行動をしたりすることがあります。特に学級の中で力のある子どもがそのような言動をしたとき、教師はそれを上回るパワーでその子のしたことを叱らなければなりません。それは教師として当然のことです。しかし、優しい先生だと思ってその気持ちを表した子や周りにいた子どもたちは、これまで優しかった先生が突然怒り出す姿を見てどう感じるでしょうか。もしかしたら裏切られたとさえ感じてしまうかもしれません。教師自身もこれまで優しく指導してきた手前、大きな声で子どもを叱責することに躊躇してしまうこともあります。ですが教師である以上、優しい印象が崩れてしまうからといってそこで叱らないという選択をすることは出来ないのです。もしそこで自分の印象を重視して叱らないという選択をすれば、悪いことをしても許される雰囲気をつくることになります。それこそ子どもたちへの裏切りです。最初から厳しい姿勢を貫いていれば、子どもへの指導に躊躇することはありません。

 

問題行動の表出を防ぐことができる

最初に厳しく接しておくことは、問題行動の未然防止という点においても力を発揮します。

最初に優しさを優先すると学級は荒れる

最初の段階で厳しさより優しさを優先すると、子どもはだんだん手に負えなくなっていきます。最初に厳しさを見せておかないと、先生が優しいという安心感から子どもは素直に自分の思いを表現するようになるようになり、やんちゃな子どもは教師に対して悪態をつくようになります。特に家庭で厳しくされている子どもは開放的になり、注意したくらいでは言うことを聞かなくなります。とにかく優しく接し、愛情を注ぐことでこうした子どもたちをどうにかしようと思ってもそれは不可能です。優しくすればするほど子どものわがままはエスカレートしていきます。子どもの問題行動に関する詳しい解説はこちらをご参照ください。⇒問題行動をする子どもへの対応

やんちゃな子どもに対しては家庭と同じように厳しくして抑えるか、うまく泳がせながら目立たせないようにしておくかのどちらかです。経験の浅い若手教師の場合、厳しさを見せておくことが最も有効でしょう。

 

出会いのタイミングで厳しさを見せる

子どもが反発しない出会いの時期は、指導を浸透させるのに最適です。逆に時間が経てば経つほど子どもは環境に慣れ、教師の指導を聞き流すようになります。出会ったばかりの緊張している時期に教師の厳しさを示しておくことで、子どもは怒られるようなことを教師の前でしないよう気を付けるようになります。つまり、悪いことをした子どもを厳しく叱るというより、そもそも教師の前で問題行動をさせないようにすることが重要だということです。教師の前で当たり前に問題行動を起こすという状況を許してしまうと、学級内の秩序が乱れ教育活動が進まなくなってしまいます。そうなると、子どもに公平な学習権を保証することは不可能です。

学級は、緩くなることはあっても勝手に引き締まるということはありません。最初に優しくして空気を緩めてしまうと、その緩みがだんだん加速して学級が荒れてしまうこともあります。最初に厳しさを見せて「引き締まった空気」を作っておけば、「ゆるんできたな」と感じたときすこし厳しさを見せるだけで最初の雰囲気に引き戻すことも出来ます。このように、最初に厳しい態度をしておくことで教育活動に余裕を持てるのです。

 

厳しさは悪ではない

厳しさの中には少なからず威圧感が含まれているため、若い先生や子どもの尊厳を大切にされている先生ほど厳しい指導をすることに対して抵抗を感じてしまうかもしれません。しかし、厳しさは悪ではありません。教師が実権を握っておくということは子どもたちを守るためにも必要なことですし、子どもの実態によっては厳しさがないと教育活動が展開できないという現実もあります。

厳しい指導は安心感を生み出すこともある

厳しく指導することは、子どもに威圧感を与えることでもあります。そのような指導によって子どもを萎縮させてしまうのはいかがなことかと思われる方もいるかもしれません。しかし、学級内で弱い立場にある子にとって先生が力を持っているということは安心できる要素でもあります。反対に、先生が学級のボスに太刀打ちできなければ弱い立場にいる子は不安になるでしょう。秩序を保つことの出来る厳しい先生の存在によって、安心して学校に通えるようになる子もいるのです。大切なのは、子どもを虐げるためではなく子どもを守るためだと心得て厳しさを演出することです。

 

厳しい先生は悪い先生ではない

厳しくてこわい先生は、必ずしも悪い先生ではありません。反対に、いつも笑顔で優しい先生が子どもにとって良い先生であるとも限りません。本当にいい先生というのは、良いことをしたときは心からその行動を褒め、悪いことをしたときは厳しく叱ってくれる先生です。教師は役者であるとよく言われますが、その時々の場面に応じてふさわしい指導をしていくことが大切です。

また、子どもに厳しく接することで気持ちが離れていってしまうのではないかと心配される先生もいらっしゃるかもしれませんが、笑顔や優しさは後からでも十分に出していけますし、子どもの尊厳を傷つけることが無ければ厳しくした後でも子どもと親密になることは可能です。厳しくしたからといって子どもと分かり合えないということはないのです。

 

計画的な指導が功を奏す

経験が浅いうちは厳しさから入るのがベター

最初に厳しく接し、徐々に笑顔を見せながら子どもと打ち解けていく。力量あるベテラン教師の多くはこの方法で子どもを握っています。秩序が保たれている教室であれば、子どもたちは安心して学校生活を過ごすことができます。そんな学級の子どもたちは非常に素直です。たとえ厳しく指導されていたとしても、教師の想いが子どもに伝わっている証拠ですね。受け持つ学級にやんちゃな子が数名いることが事前に分かっている場合やご自身の経験が浅いうちは特に、最初に厳しい姿勢を見せておくことが学級の秩序を保ち全ての子どもを守っていく最も有効な手段です。

 

優しい指導を先行させた方が良い場合もある

最初に優しく指導したとしても、厳しい指導を取り入れつつ上手くバランスを取りながら子どもの心をつかみ、秩序を保つことができる先生もいらっしゃることとは思います。しかし、そこに至るにはかなりの指導技術が必要です。経験の浅い教師には難しく、最初に優しい姿を見せることはリスクの方が大きいです。ただ、前述の通り子どもの実態によって変わってきますし真面目な子ばかりの中で厳しい指導をするとマイナスに働く場合もあります。学級開きの前に子どもの実態をできる限り把握し、実態に合わせて関わり方を考えていくのがベストだと思います。